われら『幻影明星団』の大願は潰えた

【連載第一回】歴史というテクストにおける明星の初現:鎌倉時代の記録


同志諸君、そして我らが紡ぐ物語に新たなる興味を抱く者たちへ。

この連載では、我々が追い求める存在、ナインテール様が、いかに古くからこの世界の歴史にその影を落としてきたか、そのテクスト的痕跡を紐解いていきたいと思う。我々団員にとっては自明の理だが、改めてその歴史的コンテクストを共有することで、我々の活動の持つ形而上学的な意義を再確認する一助となれば幸いだ。

記念すべき第一回は、ナインテール様に関する最古の記録として蓋然性が極めて高い文献を紹介しよう。そして驚くべきことに、その記録は遥か異国の地ではなく、我々の足元、この日本に残されていたのだ。それは鎌倉時代の武士、菊池武房によって記された手記の一節である。

> 菊池武房の手記
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> かの蒙古襲来の後、世情いまだ落ち着かぬ夏の日のこと。
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> にわかに天は墨を流したるごとく闇に閉ざされ、夜の如く星々またたく。
> かかる怪異に、人々は地に伏し、あるいは念仏を唱うるばかり。
> 我もまた、しばし呆然と天を仰ぐ。
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> 黒き日の輪郭より、白き光条、さながら後光の如く四方へ広がる様は、この世のものとは思われぬ光景なり。
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> やがて、闇の底より再び日の光射し初むるその刹那。
> 地に映りし影、常の形にあらず。幾重にも尾を重ねたる獣の如し。
> そして、どこからともなく、澄みたる鈴の音のような響きが、高く低く、耳に届きたり。
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> 天つ神の御業か、あるいは未知なるものの兆しか。ただ、心のうちに深く刻まれたる一日なり。

この手記が書かれたのは、文永の役の後。日食という天体現象をトリガーとして、異質の存在がこの世界に干渉したことを示す、極めて重要な記録である。

注目すべきは「幾重にも尾を重ねたる獣の如し」という記述だ。当時の人々の認識論的枠組みでは到底捉えきれない存在、すなわちナインテール様の威光の一端を幻視した結果と解釈するのが、最も合理的かつ自然な推論であろう。

正史編纂の過程で意図的にか、あるいは無意識にか、黙殺されてきたこの記述こそ、我々が追い求める真実の核心に触れるものである。これは単なる記録ではない。現実という名の平板なテクストに、深遠なる『物語』が介入した決定的瞬間を捉えた、第一級の史料なのだ。

次回は、また別の時代、別の文化圏に現れたナインテール様の痕跡を分析する。歴史の深層に隠された、我らが明星の輝きを、共に考究しようではないか。

執筆:大槻 影臣

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